掲載された論文等の著作権について
「文化財保存修復学会誌(古文化財之科学)」掲載された論文等の著作権について
学会誌、通信、大会要旨集など本会発行の書籍、報告書などに掲載される記事・論文について1991年4月1日以降に受け付けたものから、著作権が学会に帰属することになっています。このことについて、「古文化財の科学通信No.41」(1991年8月1日発行)で、説明しましたが、最近次の質問を受けましたので、改めて説明させていただきます。
- 質問
- 投稿規定では、掲載された論文について著作権が学会に帰属するとあるが、学会に帰属するのは編集権だけではないか。もし著作権がすべて会に帰属すると、著者に不利益とならないか。
- 回答
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投稿規定の改定は、近年の著作権法の改定・整備にそったもので、1990年前後に多くの学会で投稿規定などが改定されました。それは次に述べる理由によります。
複写機の著しい発展・普及によって、本来著作権者の許諾を必要とする場合でも、無断で多数の著作物が出版物から複写される状態が、世界中で起きています。この違法な複写問題の解決のために、先進諸国では古くから著作権の集中処理機構を設立していましたが、日本でもようやく5年前(1991年9月30日)に社団法人日本複写機センターが設立されました。
センターはわが国における著作者、出版者の保護と出版物の複写利用者の便宜を図り、また海外の著作権集中処理機構との円滑な連携を図りながら、その運営を行っています。しかしセンターが円滑な運営を行うためには、それぞれの学会や協会が記事や論文の著作権を一括して所有し、あらかじめセンターに複写権の委託をすることが必要です。もし学会が著作権を所有していなければ、複写の依頼が来る度に一人一人の著者(あるいはその遺族)にいちいち許諾を得なければなりません。
長い伝統を持つ会誌「古文化財の科学」は、国内だけでなく外国でも数多く複写され、利用されています。これからも多くの人々にできるだけ簡単な形で出版物を活用してもらえるようにすることが、本会にとっても著者にとっても有益なことと思います。このために投稿規定を改訂し、学会誌、通信、大会要旨集など本会発行の書籍、報告書などに掲載される記事・論文について、1991年4月1日以降に受け付けたものから、著作権が学会に帰属するように内規を定めました。実際の運営については、著作権が学会に所属することで、著作者本人に不利益が生じないように注意していきたいと思っていますので、会員の皆様のご理解をお願いしたいと思います。
なお著作権について簡単に説明すると、著作者の権利には著作者人格権と著作権の二つがあります。著作者人格権は、著作物を他人が勝手にいじって内容を変えたり、編集したりすることがないように保護している権利で、他の人に譲渡することはできません。これに対して著作権は、複製権や放送権・有線送信権・伝達権・翻案権などの権利を含み、他人に譲渡することができます。例えば論文のコピーを取るときに複製権、AATAの英文要約を作るときに翻案権、それをCHINやインターネットを通して利用するときに有線送信権・伝達権などが関係します。このために投稿規定と内規では著作権の内の複製権だけでなく、著作権全部を学会に帰属させるようにしています。
(「古文化財の科学通信No.61」(4月30日発行)より抜粋)