2011年に未曾有の被害をおこした東日本大震災は、地域に根ざした文化財にも大きな被害をもたらしました。文化財保存修復学会は、被災地支援の観点から、研究対象とする文化財に着目し、東北地方太平洋沖地震被災文化財等救援委員会の構成団体のひとつとして、文化財レスキュー事業に参加し、多くの学会員が被災地に赴いて文化財の救出・一時保管・応急措置の作業に携わってきました。また、劣化損傷が著しく、本格的な保存修復処置が必要な文化財については、その文化財の保存修復を専門とする会員を派遣し、修復設計を実施するなどの支援もあわせて展開しています。これら一連の支援活動は、文化財保存修復学会が阪神・淡路大震災以降、災害対策調査部会を設置し、被災した文化財の支援活動を20年にわたって実践してきた経験に裏打ちされたものです。
そこで、本シンポジウムでは、東日本大震災で文化財レスキューされた被災文化財の「その後」に注目します。ここでは、文化財レスキューされた多くの文化財が地域復興にどのように関わりをもっているのか、あるいは地域再生のためにどのように活用されるべきなのかについて参加者の方々とともに考える機会となることを期待します。
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