第6回 文化財保存修復学会奨励賞・業績賞・学会賞受賞者

表彰者決定のお知らせ

さきにご案内したように、文化財保存修復学会の表彰規程にもとづき、7名の会員の皆様の表彰が決まりました。
2012年7月1日の文化財保存修復学会第34回大会の際に表彰式を行い、表彰状および副賞の盾を受賞者の皆様にお贈りしました。

【学会賞】 2名

 

青木 繁夫(サイバー大学)

青木氏は、考古資料の保存修復研究、特に金属製出土遺物の保存修復方法に関する技術開発や遺構の保存薬剤の開発などに大きな成果を上げた。さらにイラクやアフガニスタン、カンボジア・アンコールワットなどで文化遺産保護の国際協力を推進し、敦煌やバーミヤンなどシルクロードの壁画保存についても貢献した。科学技術・学術審議会専門委員や千葉県保護審議会委員など、中央や地域の文化財保護全般の指導にあたるとともに、東京芸術大学を初めとして後進の育成にも多大な寄与がある。保存修復学会については長年にわたり庶務担当等学会の運営に貢献した。修復技術研究、国際貢献、人材育成、学会運営への協力などすべての点で学会賞にふさわしく、ここに選定した。

青木繁夫
歌田 眞介(油画修復)

1994年に油彩画の制作技法と材料・組成の研究への年来の関心を、幕末・明治初年に始まる日本近代絵画の転換に重ねて大きな実を結ばせた大著『高橋由一油画の研究-明治前期油画基礎資料集成』を世に問うまでの半世を、歌田氏は創形美術学校付属の修復研究所長として絵画修復の最先端にあって、多くの有為の修復技術者を育てながら、研究を進めた。東京藝術大学大学院文化財保存学専攻保存修復油画研究室を拠点に進められた明治期西洋画の技法と材料・組成の大規模な調査資料の集成を主導した『明治前期油画基礎資料集成』(坂本一道・佐藤一郎・歌田眞介ほか編)『明治後期油画基礎資料集成-東京芸術大学収蔵作品』(佐藤一郎編)の刊行も大きな業績である。顧問・諮問委員としての助言を通じての学会への貢献に加え、以上の研究業績と保存修復分野の先導者としての活動は、学会賞にふさわしく、ここに選定する。

歌田眞介

【業績賞】 2名

 

青木 睦(国文学研究資料館)
青木氏は、アーカイブズの物理的原形をできる限り維持しつつ、永続的に歴史的文化的資源として利用可能であるように保存公開システムを適切に構築することが重要であると考え、個々の史料ではなく史料群としてのあり方を重視し、保存のための物理的コントロールを中心に研究してきた。建物と保存環境管理、史料群のロケーション、史料群ごとの保存措置の状況、個々の史料の劣化状態・修復状況・記録媒体調査・利用状況について十分に理解し、群から個への視点を持って保存計画を立てアーカイブズ保存を達成するという流れを明示し、アーカイブズ保存管理への理解を深めるよう活動してきた。氏のこれらの活動は非常に貴重であり業績賞に相応しく、ここに選定した。 青木睦
(写真協力/有限会社えくてびあん)
本田 光子(九州国立博物館)
本田氏は、弥生・古墳時代の赤色顔料について優れた研究成果を上げた研究者である。九州国立博物館の建設・運営にあたっては、文化財・人・自然に安全で環境に負担のかからない保存のあり方を目指して、IPMによる資料の生物被害防除を長年推進してきた。加えて、IPM活動を館の内部の運営方式にとどめるのではなく、IPM活動の根幹である点検や清掃などの日常管理をシステム化して、それを下にIPM活動のためのわかりやすい教育プログラムを組み立て、博物館ボランティアや地元NPO法人の職員等に対する研修を積極的に行い、博物館と市民が協同して行う新しいIPMの形を作り上げた。氏のこれらの活動は非常に貴重であり、業績賞に相応しく、ここに選定した。 本田光子

【奨励賞】 3名

 

北村 繁(漆芸修復)
北村氏は、漆工芸品の制作を行いながら、わが国に伝わる漆工文化財の修復にたずさわっている。近年の学会大会では自然科学者と共同で行った修復作業について発表し、自然科学的手法を用いた修復の成果や課題について、若手の漆工文化財修復技術者の立場から新鮮な発表をしている。その他、氏は工芸技術や文化財修復の研鑽のため、一年間ドイツに留学しているが、その経験を生かして海外での漆器の保存調査や修復・ワークショップの開催などに積極的に取りくんでいて、国内だけでなく海外に所蔵されているわが国の漆工文化財の保存修復をも、これから中心になって担っていく技術者として大きな期待がかけられる。また第33回大会では実行委員として活躍するなど、文化財保存修復分野と学会の両面において、今後とも一層の活動が期待され、奨励賞に相応しいと判断した。 北村 繁
中村 晋也(金沢学院大学)
中村氏は、自然科学的手法を応用したガラスや青銅など無機材質文化財の材質・製作技法の解析を専門とし、考古科学や保存に関する問題に取り組んできた。また、能登半島地震などの文化財レスキューの体験をもとに、文化財を未来に伝えるために、文化財の収蔵・保管時における防災・減災のあり方について検討し、被災各地のレスキューにも積極的に貢献している。教育面では、技術や知識だけではなく文化財保存の倫理も教えつつ若手を育て、地域の要として充実した成果が見られる。氏の活動は、さらに今後の活動が期待でき、奨励賞に相応しいと判断した。 中村晋也
米村 祥央(東北芸術工科大学)
米村氏は、地元の人々と協力しながら山形県を中心とした東北地方の文化財の調査・保存を行ってきた。東北地方の文化財が抱える保存上の課題について積極的に取りくみ、日常的なケアを行って文化財の保存環境を整えることを重視し、地域で管理する人々と文化財保護に関する意識を共有しながら、地元で入手しやすい器材を用いて安全で簡便に実行できる保存方法を開発しようと研究を進め、成果を上げている。氏の研究は、これからの地域文化財保存のあり方を考えるとさらに今後の活動が期待でき、奨励賞に相応しいと判断した。 米村祥央

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